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「落とし穴」について(中嶋真守)


僕がバイト先の仲間たちと車で山に行き、川沿いを散歩していた時の事です。

左に流れる小川を見ながら歩いていたら足を踏み外して穴に落ちてしまいました。

どうやら結構深いらしい、幸運にも無事だった僕は仲間に「おーーーーい」と叫んでみました。

しばらくたっても返事がない。あいつらめ、みんなで計画して僕を落としたな。

そういうふざけをやり合うのはいつもだけど、こんな深い穴はさすがにちょっと怖いぞ。

待ってても暇でしかたがないので逆に穴を掘ってやりました。

すると硬いものにあたったのでスマホで照らしてみるとそれは木の箱で、中には歴史の教科書で見たような大判小判の財宝がありました。

驚いて仲間に教えてやろうと「おーい!ちょっと見てくれ!」と呼びかけてみたり、手元の小判を鳴らしてみたりしたけれどやっぱり聞こえてないみたい。

しかたなく箱に向き直るといつの間にか目の前に、大きなつづらと小さなつづらと、よくばりがつづらを開けた時に出てくるはずのこの世のあらゆる恐怖がいました。

僕はふふ、と笑いながら「いや大きなつづらは開けてないのに出てきちゃダメじゃん」と言ったら、あらゆる恐怖は「いやあ、舌切り雀さんが外は美しいっていうもんだから気になっちゃって。焦がれて焦がれて外に出たけど、僕にはどうもまだわからないんですよね」と。

肩透かしを食らわせてしまったようでなんともすまなくなったので、スマホで蜘蛛に電話して、糸を垂らしてもらいました。

あらゆる恐怖はそれにくっつくと、お外に出てすぐ戻ってきました。

「うわあ、外って色々あるんですね。僕なんだかおっかないや」と大きなつづらに逃げ帰るので「こらこら、見せてやったのにその言い草はなんだ」と少し腹がたちました。

するとつづらからとても恐ろしい音がして僕は驚いて飛び上がり、その拍子に穴から出てしまいました。

なんだか悪い事をしたなあ、とつづらのなかのやつにすまなく思って、川原の花を摘んで穴に投げ込みました。

「ごめんよお、これあげるから勘弁しておくれ」

穴の奥から優しい音が聞こえました。


落とし穴の夢でした。

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