これは高校3年生のとき、敬愛してやまない国語の先生と交わした会話です。
「山口さん。神話ってどういう意味か、ちゃんとご存知ですか」
「え、昔話です」
「100点中30点の回答ですよ。世界の理やら宇宙の始まりやらを超自然的な存在に頼ったお話ですね」
「ハイ」
「もう一つの意味は?」
「もう一つ?」
「辞書でお調べなさい」
「…実体は明らかでないのに、長い間人々に絶対のものと信じこまれ、称賛や畏怖の目で見られてきた事柄、です」
「そうですね。つまりね、山口さん。評論で『神話』という言葉が使われたら、嘘っぱち、という意味になることが多いです」
「なるほど」
「貴方の回答を三角にしたのは、そういうニュアンスを入れてなかったからです」
「なるほどなるほど」
「山口さん、貴方は素直ですねえ」
「へへ」
「素直でいい子は、国語が上達しませんよ。性格がねじ曲がって、言葉の裏を考える人ほど国語が得意になるのです」
「わかりました。入試までにねじ曲げます」
「ウーン。まあ、頑張ってください…」
ほとんどノンフィクションの会話です。
何故だか妙に覚えています。先生の苦笑と共に。この先生に会って、初めて私は国語が好きになったのです。
ちなみにその先生は、子どもは3歳になるまで親が育てなければ性格が歪むという3歳児神話を信じておられました。
そろそろ蝉時雨も終わりですね。体調にはお気をつけて。
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